奈良は、歴史を感じられるスポットがある県だ。
新幹線で京都まで行き、近鉄で奈良行きの特急に約40分乗ると、近鉄奈良に着く。
駅から路線バスに約15分乗り、世界遺産・平城京跡歴史公園へ行く。
中国の影響を受けた赤い門(朱雀門)と、そこへ伸びる広大な敷地が、平城京の活気を想像させる。
朱雀門の入り口に立つと、思いがけない光景に出会った。
歴史公園を、近鉄が横切っていく。
公園は、踏切の先に続いている。
行きの電車から朱雀門が見えていたが、まさか敷地を横切っているとは思っていなかった。
普通に考えると、世界遺産の中を鉄道が突っ切ることは起こりえない。
この光景が生まれたのは、平城京跡の研究が進む前に、近鉄の前身の鉄道会社が大和西大寺~近鉄奈良間の鉄道を開通させたことが原因だ。
開通当時(1914年)も、平城京の跡地についての研究がされていて、近鉄の前身会社はその位置を避けるように線路を通していた。
しかし1960年代に、平城京の正確な敷地が判明し、近鉄の線路が敷地を分断していると判明した。
移設の計画が持ち上がったこともあるが、奈良県、奈良市、近鉄の主張がかみ合わず、膠着状態に陥っている。
そんな複雑な経緯があるものの、この光景を求めてやってくる観光客は多い。
特に鉄道好きには、世界遺産と近鉄の組み合わせは眼福だ。
しかも、近鉄奈良線は車両の種類が豊富なので、長く見ていても飽きない。
また、新大宮方面のカーブが、車両を美しく見せてくれるので、撮影もしやすい。
歴史公園には、豪華な内装が再現された第一次太極殿や、平城京の復原にまつわる資材や道具が分かる復原事業情報館がある。
それらを巡りながら、時折駆け抜ける電車を眺める。
歴史と鉄道を、同時に楽しむことができる。(しかも無料で。)
最も多く見かけたのは、紅色と白色、又は灰色と白色の、普通列車だ。
広大な草原を駆け抜ける姿や、朱雀門に差し掛かる姿を、撮影した。
また、私が行き帰りに利用した特急も、時折見かけた。
オレンジ色のレトロなデザインだ。
さらに幸運なことに、観光特急「あをによし」をカメラに収めることもできた。
紫色に光る車体に金色の装飾が施され、唯一無二の美しさを感じられた。
歴史の授業で誰もが習う平城京は、実は鉄道スポットでもある。
一カ所で歴史も鉄道も堪能でき、二度おいしい観光地と言える。
できればこのまま、移設されないで欲しいと願う。
2024年7月探訪