東京らしいのに、懐かしい 都電荒川線(東京さくらトラム)

都内に唯一残る路面電車

都電荒川線は、都内では珍しい路面電車だ。

三ノ輪橋から早稲田までを結んでいる。

全部で30の停留所があり、所要時間は約一時間。

外国人向けの愛称は「東京さくらトラム」だ。

都電荒川線って、どんな路線?

かつて東京には数多くの路面電車(都電)が走っていた。

戦後になって、交通渋滞を解消するため、次第に都電は廃止されていった。

しかし三ノ輪橋〜早稲田の荒川線は、道路と併用する部分が少なく交通に支障が出ないため、残ることになった。

1両の様々なカラーの車両たち

車両は5種類ほどある。

同じ種類でも、色合いが複数パターンあり、広告がラッピングされたものもある。

共通しているのは、1両であるくらいだ。

今回乗ったのは、前面がビビッドなピンク色で側面が白色の、やや角張ったデザインのタイプだ。

途中、白と黄緑の都バスのようなデザインの車両、紺とベージュの昭和レトロなデザインの車両とすれ違った。

バスと同様、乗る時に車内でICカードをかざす。どこで乗降しても、一律170円だ。

発車時は「チリンチリ~ン」と、昔ながらのベルが鳴る。

その一方で発車してからのスピードは速く、車両の新しさを感じる。

名門大学の裏にある早稲田

今回は、早稲田から乗った。

メトロ東西線の早稲田駅からは、歩いて10分かかる。

早稲田大学の裏へ回るように歩き、坂を下る。

中央に線路が敷かれた大通りに出る。

線路に沿って道を歩くと、早稲田の停留所に着く。

普通の広い車道と見せかけて、路面電車のレールや停留所があるのが意外だ。

ロマンティックな停留所名と、レトロな交通標語

本数は日中、6分に1本程度と、とても多い。

「チリンチリ~ン」とベルを鳴らし、急発進する。

「面影橋」という、情緒のある停留所を過ぎると、交通標語の看板が正面に見えてくる。

「渋滞が 招く迷惑 社会の損失」

手書きなので、古めかしい。これを設置した時代は、渋滞がもっと酷かったのだろう。

歴史を感じていると、車両はぐいっとカーブした。

急な坂を登って副都心へ

気づくと目の前には、長く険しい坂道が待っていた。

登り坂の真ん中辺りに、停留所がある。

停留所で乗降して、さらに登る。

てっぺんに来たと思いきや、今度は下りだ。

アップダウンを繰り返して、首都高の高架が見えてきた。

東池袋四丁目の停留所は高架の下にある。

メトロ副都心線とも乗り換えられる、都会のど真ん中の停留所だ。

それなのに、映る景色は郊外に見える。

下り坂とカーブを経て大塚駅前

車両は、住宅街の間を走っていく。

緩い下り坂を滑るように走り、カーブを曲がる。

いきなり視界が開けて、大きな駅舎が現れる。

駅前広場や車道の間を縫うように走る。

JRの高架下に、大塚駅前の停留所がある。

行き交う人々や、去りゆく電車をのんびりと眺めることができた。

先が見えないと思ったら、道路と併用する区間だった

その後は再び、住宅やビルに挟まれた軌道を進む。

滝野川一丁目辺りで、突き当たりの線路が途切れているように見える。

急カーブなのは分かるが、果たしてどうなっているのか。

飛鳥山を過ぎて、カーブを曲がると、そこは車道だった。

車線の境目に沿って走る。

自動車に混ざって、スピードを緩めて進む。

乗ってきた中で最も路面電車らしい光景だ。

新幹線の高架に隠れた王子駅前

JR王子駅の高架を潜り、停留所・王子駅前に到着する。

路面電車らしい光景は停留所に着く直前で消える。

王子駅前は確かに駅に沿っているが、JRの改札からは遠い。

しかも、間に新幹線の高架があるため、遠くから駅を眺める状態になる。

都内なのに、どこか寂しげな光景だ。

レトロな車両が見える荒川車庫前

直進するレール以外に、斜めの方向に伸びたレールが見える。

荒川車庫前という、車庫のある停留所が近づく。

車庫の他、「都電おもいで広場」という博物館もある。

左手に、行き先が「銀座」とある古めかしい車両が見える。

都電の全盛期を知ることができそうだ。

バラが彩る三ノ輪橋

熊野前で日暮里・舎人ライナーの高架を潜り、町屋駅前で京成の高架を潜る。スカイツリーも見える。

線路脇を、たくさんのバラが彩る景色になると、三ノ輪橋はもうすぐだ。

停留所は2方向で離れている。

手前の停留所で降ろしてから、奥の停留所で乗せる。

奥の停留所まで、バラが咲いている。

三ノ輪橋には、古い喫茶店や昔ながらの商店街がある。

下町らしい、どこかホッとする街だ。

まとめ

都電荒川線は、都会らしい景色と昭和の雰囲気が混ざった路面電車だ。

2022年8月乗車