千葉の木更津は、房総半島の西側にある駅だ。
首都圏へのベッドタウンの駅でもあり、海まで歩いていける駅でもある。
そんな木更津からは、久留里線が出ている。
久留里線は、木更津から上総亀山までを結ぶ路線だ。
全線の乗車時間は、約70分。
千葉県内のJR路線では唯一、電化されていない。
全線ワンマン運転となっている。
大半が無人駅であることから、ICカードには対応していない。
また、ほとんどが途中の久留里で折り返しとなり、終点の上総亀山まで行く列車はあまりない。
なお、2024年11月に、JRが「末端区間である久留里〜上総亀山を廃止する」という方針を示した。
車両は、比較的新しい気動車が使われている。
1両か2両の短い編成だ。
はっきりした黄色や緑色、青色などを、ブロックのように貼り付けたデザインとなっている。
ディーゼルエンジンに「ガ~!」と力を入れて走る時もあるが、基本的には静かな走りを見せる。
私は今回、2両の気動車に乗った。
列車は、ビルが並ぶ木更津駅を出発して、内房線と離れていく。
すぐにビルは姿を消し、木造の民家が多い地帯に入る。
清川を過ぎると、田園が広がる光景が見られる。
稲刈りを終えた薄茶色の絨毯が、遠くまで並んでいる。
横田は、久留里線では数少ない列車交換ができる駅だ。
停車してすぐ、反対方向の気動車がやってくる。
発車までしばらく待つ。
開いたドアからは、遥か向こうまで伸びる田園と、並ぶ民家がよく見える。
その後も列車は、田んぼの中を走っていく。
田園が続く中、野焼きで煙がもくもく立ち上る様子が見える駅もある。
また、並走する道路ととても近く、行き交う車やバイクがよく見える駅もある。
ほとんどの列車が終点となる、久留里にやって来た。
ここでも列車交換ができる。
蔵を模した瓦屋根の駅舎が建つ。
駅名標は、両方向の駅を示している。
近い将来、「平山」の字がなくなってしまうと想像すると、切なくなる。
久留里から先は、森や川が多くなる。
急勾配の流れで滝のように見える川が、森の間から見える。
木々が窓を擦るほどの、山深い場所も走っていく。
終点の上総亀山まで来ると、森が開け、田畑や住宅が並ぶ光景が見られる。
自然の多いローカル線の終点にしては、意外にも人の気配や生活感が感じられる。
ホームからは、少しだけ伸びた線路と、木々がそびえる山が見える。
駅舎には、木製の駅名看板が掲げられている。
駅前には、古くからやっていそうな酒屋もある。
列車が来なくなる日が来るのかと感傷的になりつつ、折り返しの列車に乗った。
久留里線は、ディーゼル車両が田園や森を走る、奥房総のローカル線だ。
2024年12月乗車