関西の大手私鉄は、関東に住む人に馴染み深いものとそうでないものがある。
京阪は、どちらかというと知名度が低い。
大阪側も京都側も、大ターミナル駅に接続しておらず乗る機会が少ないのが、その理由だ。
今回は、大阪市の淀屋橋と京都市の三条を結ぶ、京阪本線に乗ってみた。
大阪と京都を結ぶ路線には、JR、阪急、京阪の3路線がある。
JRの新快速の所要時間は約30分に対し、京阪本線は約50分となっている。
カーブの多さが、所要時間の原因だ。もじって、「京阪電気鉄道カーブ式会社」と言われることがあるほどだ。
実際に乗ってみると、カーブが多いため、直線の箇所の方が少ない感覚を受ける。
かといってノロノロと走ることはなく、安全にスピードを出して駆け抜けていく。
今回は、プレミアムカーという車両に乗った。
上部を赤色、下部を金色で塗装した、高級感が漂う車両だ。
ヘッドマークは、鳩をモチーフにしたクラシカルなデザインだ。
座席は転換クロスシートだ。JRの新快速も転換クロスシートだが、使われている生地が全く違う。
ふかふかで温かみがある、黒色の模様が入った生地だ。長く乗っても、疲れにくい。
プレミアムカーは、一部の車両を除いて、無料で利用できる。
淀屋橋は、地下にホームがある。
北浜・天満橋に停車し、地上へ抜ける。
川に沿って走り、繁華街の駅・京橋に停まる。
駅を出てJR大阪環状線をオーバークロスすると、『グランシャトー』が見える。
サウナやゲームセンター、パチンコが入った、レトロなレジャービルだ。
列車は大阪市を出て、北東へ向かう。
住宅街を走っていく。
短い区間に多くの駅がある。
創業当時は路面電車であり、短い距離で駅が設けられたのが、その理由だ。
普通列車を、何本も抜き去っていく。
カーブでも、ほとんどスピードを緩めない。
通過する駅の中で、珍しい光景を見た。
駅の屋根から、木が生えている。
たくさんの緑の葉っぱが、屋根の上にこんもりと乗っているように見える。
樹齢700年の、クスノキだ。
萱島神社の御神木として親しまれてきたクスノキは、新駅を建設する際に住民から保存を求められ、このような形となった。
列車はひらかたパークでお馴染みの枚方市に停車し、ショッピングモールがある樟葉に停車する。
大阪府から、京都府に入る。
いつの間にか住宅が少なくなり、山並みが近いエリアに入っていた。
駅間距離も、ぐんと長くなった。
岩清水八幡宮を通過し、木津川を渡る。
広がる田園の上に、曲線的な高速道路が立つ。
壮大な光景に見入っていると、すかさず橋梁が見えてくる。宇治川を渡る。
車両基地を横切って、走っていく。
列車は、宅地が少ないエリアを走行する。
白い煙を出す建物が見えてくる。
真横に来ると、武骨な工場だと分かる。白い煙が、風に揺られて登っていく。
その隣も、パイプ剥き出しの工場だ。やはり煙を吐いている。
京都府にも、工場街があるのだと気付かされる。
中書島に停車する。
再び、宅地エリアに入っていく。
新しい住宅に混じって、古い奥行きのある住宅がある。
京都府に入ったことを実感する。
丹波橋に停まる。
通過する伏見稲荷の駅は、朱色の柱が使われている。
千本鳥居の最寄り駅らしいデザインだ。
東福寺付近で、JRの線路を跨ぐ。
高架から、京都駅付近の建物が見える。
京阪本線はそちらへは向かわず、地下へと潜っていく。
七条、祇園四条と停車し、本線の終点・三条に停まる。
列車は、鴨東線の終点・出町柳まで向かう。
ふかふかの座席に別れを告げ、三条で下車した。
京阪本線は、カーブでも快適な座席と移り変わる景色が、楽しめる路線だ。
速さではJRに劣るが、車窓の面白さと座り心地では、こちらが上だ。
2024年3月乗車