茨城県の取手は、東京に近い。東京から常磐線快速で45分なので、通勤圏内といえる。
そんな取手からは、東京近郊には珍しい、気動車の鉄道が出ている。
関東鉄道常総線だ。
関東鉄道は、茨城県の鉄道とバスの会社だ。
鉄道は、取手~下館を結ぶ常総線と、佐貫〜竜ヶ崎を結ぶ竜ヶ崎線がある。今回は、常総線に乗った。
全25駅で、所要時間は約1時間40分。茨城県西部を、南北に貫いている。
南半分の取手〜水海道(みつかいどう)は複線、北半分の水海道~下館は単線となっている。
非電化の理由は、石岡市の磁気観測所との関係にある。電車(直流)だと、磁気観測所に影響を及ぼすおそれがある。電車(交流)であれば影響は出ないが、維持費が高くなる。
そのため電化せず、気動車を走らせている。
非電化路線は大概、本数が少ない。しかしこの路線はそうではない。特に取手〜水海道は、毎時約3本、平日朝は8本もある。
乗る時間を綿密に調べなくても、ふらっと乗りに行ける。
使用されている車両は、1両か2両の気動車だ。車両は多くの種類がある。
キハ2100形、キハ5000形は、色合いが特徴的だ。赤と青のラインに白の背景色が挟まれ、トリコロールカラーに見える。
レトロな愛らしさを感じるデザインだ。
この他、白、黄色、青の3色が鮮やかな車両もある。
また、ベージュとオレンジで昭和の雰囲気を持つ車両もある。
いずれも、発車時にエンジンの音を轟かせ、煙をぶわっと吐き出す。最速で、時速80キロ出す。
見た目に反して、力強い。
取手を出ると、2両の列車は町中を駆けて行く。平地に、一軒家が多く並ぶ。
複線なのに非電化なので、2本の線路が遠くまで伸びているのが見える。
新取手に差し掛かると、左手に国道294線が見えてくる。大きなレストランや商店が並ぶ。自動車を追い越し、進んでいく。
戸頭辺りから、国道とは離れていく。
宅地を走っていくと、三角形を複雑に組み合わせた駅舎が見えてくる。
守谷に到着する。模様を描く壁の中には、つくばエクスプレスのホームがある。関東鉄道とは、90度にオーバークロスする。
守谷は、新しい住宅街・マンション街に囲まれた駅だ。つくばエクスプレスが開業してから、利用者が伸びた。
乗客の多くが、この駅で下車する。
隣の新守谷は、赤い煉瓦の大きな屋根が目印だ。
発車すると、宅地が減り、工場や運送会社の倉庫が多くなる。小絹から、やや長い駅間距離を経て、水海道に到着する。
この駅で、2両の列車から1両の車両に乗り換える。
水海道は、常総市役所の最寄り駅だ。駅前には、趣のある街が広がっている。
水海道を出ると、途端に線路が単線へと変貌する。
マンションは数を減らし、一軒家が増えていく。家と家の間隔も、広くなっていく。
さらには、家が遠くに見えるだけの田園地帯に突入する。広大な水田や畑が、左右に伸びている。
緑の絨毯の中を突っ切って走るのは、清々しい。
三妻の辺りで、右手の彼方に謎の建物が見える。合掌造りの大きな屋根に、クワガタの角のような飾りが乗っている。宗教団体の施設らしい。
石下の辺りには、和風の城がある。周りの住宅街よりも高いので、遠くからもよく見える。常総市地域交流センターという、博物館だ。
単線になってから、列車交換のために駅で待つことが増えた。
雑草に覆われたレールを、気動車がとことこ走ってくる。
下妻辺りからは、梨の木やビニールハウスが増える。線路の左右が、それらに囲まれている。
広い田園地帯とも違う、のどかさがある。
終点・下館の手前で水田地帯になり、電車の線路が合流してくる。JR水戸線だ。
取手から1時間40分、下館に到着する。真岡鐵道にも乗り換えることができる。
北口の駅前には、市役所がある。整備された新しい町並みが続く。
関東鉄道常総線は、時刻表を気にせず乗れる気軽さとレトロな車両が魅力的な、ローカル鉄道だ。
2023年7月乗車