JR横須賀線は、大船から鎌倉、逗子、横須賀を経由し、久里浜に至る路線だ。
明治時代、東京と海軍の拠点・横須賀を結ぶために作られた。
使われている車両は、90年代から走っているE217系と、2021年から導入されたE235系だ。
今回は、大船より1つ東京寄りの戸塚から、逗子行きに乗った。
やって来た車両は、15両の古い方(E217系)だ。
前面は上部が傾斜し、真ん中に貫通扉を設けたデザインだ。
クリーム色を、上下からネイビーブルーで挟んだ帯が、鮮やかだ。
住宅と工場の並ぶ戸塚~大船間を抜けると、自然が多くなる。
すぐに、こぢんまりとした駅・北鎌倉に到着する。
ホームは簡素な柵で囲んだだけで、駅舎は小さく東京方面のホーム側にしかない。
そんな駅に、観光客がどっと溢れた。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』放映の前は、こんなに混まなかった気がする。
北鎌倉を発車すると、円覚寺付近の林が見える。
手を加え過ぎない、潤いある一角だ。
お洒落な民家が増えてくると、すぐに鎌倉に到着する。
乗客の8割が、ホームへと降り立ち、改札への階段に向かう。
駅前に、白亜のお屋敷といった佇まいの、『ホワイトホテル』という、女性専用のホテルが建つ。
ガラガラになった列車は、鎌倉を出ると、鶴岡八幡宮へ繋がる大通りをオーバークロスする。赤い鳥居が、車内からも見える。
山に囲まれた住宅街の間を走り、トンネルを抜ける。
トンネルの先も、のどかな町が続く。
リゾート地として名高い、逗子にやって来た。
自動放送が、終点を告げる。
逗子から久里浜までは、別の列車に乗る。
15分ほど待ってから、わずか4両の新しい車両(E235系)がやって来た。
前面は、フレーム状のネイビーブルーが鮮やかだ。クリーム色とのグラデーションも印象に残る。
何といっても、先ほどより11両も少ないのが気になる。
同じく三浦半島を走る京急に、利用者が偏っているのが原因だろう。
スピードでは京急に勝てないが、のんびり行きたければこちらがいい。
逗子を出ると、頭上を京急逗子線が交差する。
やがて左手に第一運動公園が見える。京急の古い車両(京急デハ601号)が展示されていて、目を惹く。
東逗子は北鎌倉同様、簡素な造りのホームだ。
その先はもっと山深くなる。
トンネルを抜けると、京急本線が頭上でオーバークロスする。
住宅街を抜け、トンネルに挟まれた駅・田浦に到着だ。
駅の向こうは、マンションと海上自衛隊の建物しかない。
次の横須賀までは、トンネルに入ったり出たりを繰り返す。
3つのトンネルを越えた先に、目を見張る光景が現れた。
海上自衛隊の、軍艦が集まる港だ。
青い空と海の間に、堂々とした佇まいのグレーの軍艦が浮かぶ様は、何とも魅力的だ。
しかも観光列車の如く、この辺りでスローダウンする。見ないと損な車窓だ。
横須賀駅の直前でも、トンネルを潜る。
外国の軍艦に、見学の人だかりができていた。
この日は海上自衛隊設立70周年のイベントだったので、貴重な光景だ。
横須賀で、ほとんどの乗客が降りた。
ここから南側は、複線から単線に変わる。
長い長いトンネルを、列車は走っていく。
抜けた先は、山に囲まれた宅地が広がる。
衣笠に到着だ。
駅の周辺には古い商業ビルが建ち、それなりに栄えているのが分かる。
久里浜までは、やや駅間距離が長い。
道路と並走しつつ、住宅や店舗が並ぶ町を走っていく。
単線になってから、車窓の流れがゆっくりになった気がする。
やがて、終点・久里浜に到着する。
終点のみ半自動ドアとなったので、ボタン操作のアナウンスが流れた。
ホームは、広大な線路が引かれた敷地の端にある。無機質な光景だ。
彼方の線路に、一般には使われていない、運転士訓練用の車両が停まっている。
周囲にはマンションなどがあるため、終着駅にしては寂しくない。
JR久里浜駅から歩いて3分で、京急久里浜駅に着く。JRとは打って変わり、お洒落な駅ビルが隣接し、活気を感じる。
JR横須賀線は、鎌倉、逗子、横須賀方面を、のんびり楽しめる路線だ。
2022年11月乗車