東京駅の中央線のホームへ行くと、時折青梅線に乗り入れる列車が停まっている。
青梅線内まで通しで乗ることは、なかなかない。
ふと思いついて、乗ってみた。
青梅線は、立川から奥多摩を結ぶ路線だ。
途中の青梅までは、東京駅から直通している。
青梅~奥多摩はピストン輸送になっていて、「東京アドベンチャーライン」の愛称が付いている。
立川~東青梅は複線、東青梅~奥多摩は単線となっている。
車両は全線を通して、E231系が使われている。中央線と共通した車両だ。
青梅~奥多摩では、わずか4両で走る。また、「東京アドベンチャーライン」のヘッドマークが付いている。
列車は、立川から中央線と別れて走っていく。
さらに拝島で、五日市線が左に分岐していく。
しばらくは、住宅が並ぶ郊外の地域を走っていく。
小作(おざく)辺りに来ると、多摩の山並みが見えてくる。
東青梅駅で、複線の線路が単線に集約される。
単線になってから、緑の割合が一気に増える。
青梅に到着する。
青梅から、4両の車両に乗り換える。
この駅は、途中下車するに値する。町全体が、昭和レトロな雰囲気を醸し出しているためだ。
駅を出てすぐにある、お土産店の『まちの駅青梅』は、古い商店のようなデザインが施されている。
旧青梅街道付近には、昭和の頃からありそうな美容室や写真館が並ぶ。
また、昭和レトロ商品博物館という博物館もある。
町全体が、テーマパークのようだ。
奥多摩行きに乗り換え、西へと進む。
少しずつ建物が減り、行く手には森が見える。
線路も草に覆われ、辺り一面緑色の山並みがそびえる。
無人駅に停車していく。
日向和田には、小さな待合室がある。
外の壁には水引が飾られ、室内の壁には寄木細工のような装飾がある。
ふらっと下車して入りたくなるようなデザインだ。
御嶽では、列車交換を行う。
「東京アドベンチャーライン」のラッピング車両はいくつか種類があり、反対方向の列車を見て違いを楽しめる。
御嶽を出てしばらくすると、左手に多摩川が並走するのが見えてくる。
森に囲まれた青い川が、大きく湾曲している。
清々しい光景だ。
列車は、木々が立ち並ぶ山の中を進んでいく。
時折、トンネルも抜けていく。
川井のホームからは、目を惹く建造物を見ることができる。
多摩川に架かる、奥多摩大橋だ。
ピンと張り詰めた斜めのワイヤーと逆V字の主塔からなる。
山並みの中で凛と佇んでいる。
終点のひとつ前・白丸は、トンネルが隣接する駅だ。
長さの違うトンネルが連なっているのを見ることができる。
この駅のホームには、民家の門がある。
他にも、複数の一軒家らしき建物が、駅に隣接する。
生活感があるのかそうでないのか。不思議な無人駅だ。
長いトンネルをいくつか抜けると、終点の奥多摩に到着する。
駅舎は、瓦屋根の2階建てだ。
駅の横には、現役の古めかしい工場が佇む。
トタンに様々な部材を付けたような壁面が、目を釘付けにする。
道路の案内看板には、「甲府」の字があり、山梨県が近いことを示している。
遠くまで来たことを実感しつつ、駅へと引き返した。
青梅線は、東京都でありながら山や森、川の景色を楽しめて、駅ごとの個性も感じられる路線だ。
2024年9月乗車