川崎から、JR南武線に乗る。
南武線は、川崎市から多摩地区を通り、立川まで向かう電車だ。
1駅乗って、尻手に着く。
新しくて長い、通勤向きの車両を降り、乗り換える。
南武支線は、尻手〜浜川崎を結ぶ路線だ。
全部で5駅あり、所要時間は10分に満たない。
同じ線路を、貨物列車も通る。
ホームでしばらく待つと、南武線とは全く異なる電車がやって来た。
南武線とは異なり、編成はわずか2両。
国鉄時代からある、205系という車両だ。
黄色、オレンジと茶色の南武線とは、雰囲気が違う。
帯の色は、ブルーグリーンとカナリアイエローの2色だ。
側面の帯には、五線譜と音符のモチーフがある。
色合いといい柄といい、何だか楽しそうだ。
発車時刻になると、「プシュー、ガタガタッ」とドアがぎこちなく閉まる。
基本、スピードはあまり出さない。
時速わずか80キロでも、モーターのうなり声が車内に響き渡る。
すぐに、教習所『飛鳥ドライビングカレッジ川崎』が右手に見えてくる。
三方向を線路(南武支線、東海道線、貨物路線)に囲まれた、珍しい立地の教習所だ。
90度に交わる東海道線を、上から見ることができる。
京急線との乗り換え駅・八丁畷に着く。
その先には、普段は見かけない背の高い電線が待ち受けているのが見える。
沿線には、住宅が並ぶ一方、工場も点在している。
工場からは、白い煙が立ち登っている。
ホームが片側にしかない駅・川崎新町を過ぎる。
その後は、上下ホームが離れている駅・小田栄だ。
人工的な景色の中で、小さな無人駅が続く。
列車は、雑草が目につく線路を走っていく。
1線しか入れないホームの、浜川崎に到着する。
ホームのフェンスには、ファンタジックな水彩画が掲示されている。
モチーフは鉄道だ。
フェンスの向こうには、車両整備工場がある。
横向きのクレーンが、前後にスライドして、電気を送って作業する。
クレーンの動く音が、大きく響く。
ICカードを機械に読み取らせて、駅の外へ出る。
道路を挟んで、JR鶴見線のホームがある。
鶴見線は、南武支線よりもさらに、秘境感の強い路線だ。
乗り換える人は、ICカードを機械にかざしてはいけないと書いてある。
鶴見線側の駅舎には、「浜川崎商店」がある。
味のある居酒屋のようだ。
鶴見線の線路の先は、踏切から見ることができる。
無数の架線、複雑に重なった線路のポイント、そして工場だけの景色がある。
短時間で、住宅街から大きく変貌を遂げたのが分かる。
南武支線は、日常である南武線と、非日常である鶴見線を結ぶ、短くも内容の濃い路線だ。
2022年8月乗車