千葉県で最も大きな駅・千葉からは、様々な路線が出ている。
房総半島の東側を走るJR外房線に乗り、上総一ノ宮へ向かう。
上総一ノ宮からさらに、南房総方面の電車に乗る。
大原で下車すると、いすみ鉄道のホームが見える。
レトロな「ようこそいすみ鉄道へ」の看板の下は、汽車を待つ人々で賑わっている。
いすみ鉄道は、房総半島の東側にある大原と、真ん中にある上総中野を結ぶ、第三セクターの路線だ。
1930年に一部開通した。
元は国鉄木原線という、国鉄の路線だった。
かつては、上総中野から木更津まで伸ばす計画があった。
全14駅で、所要時間は約1時間。
なお上総中野からは、小湊鉄道に乗り換えて、JR内房線の五井まで行ける。
車両のデザインは、主に二種類ある。
いすみ鉄道で特徴的なのが、菜の花をイメージする黄色で塗装された車両だ。
山と海をイメージする緑と青のラインが、元気な黄色を引き立てる。
その他、オレンジ系の2色(国鉄色)を使った車両もある。
1両の気動車は、ラッシュのように混雑した。
座席が全て埋まり、運転席付近にはたくさんの人が立っている。
発車すると、エンジンが唸り声を上げる。
レールの継ぎ目ごとに振動があり、「ガタンッ……ゴトッ」とリズムを奏でる。
すぐ右を走る外房線と分かれて、緑の中を走っていく。
汽車は、野原を抜け、川を渡り、水田の横を走る。
架線がなく、遠くまでスッと伸びたレールを見渡せる。
線路の横には柵がなく、緑の景色に溶け込んでいる。
いくつかの駅で停車し、ゆっくりと進んでいく。
あまり乗降する人はいない様子だ。
水田には、生長途中の苗が生えている。
水面は鏡のように、空を映し出す。
のどかな景色だ。
国吉駅に近づくと、留置された国鉄色の車両と、白い二階建ての駅舎が見えてくる。
駅の出入口には、しめ縄が吊されている。
国吉神社という神社が近いためだ。
車両が停車すると、構内踏切を渡ってお弁当販売の人々がやってきた。
黄色い車両の着ぐるみ(頭部だけ)を、顔にはめた人もいる。
わずかな時間ながら、何人かの乗客がお弁当を購入していた。
この路線では珍しい、賑やかな光景を見ることができた。
汽車は、いくつもの水田の横を抜け、木でできたトンネルを潜っていく。
民家は数えるほどしかない。
大多喜に着くと、多くの乗客が降りていく。
駅名の前に付く「デンタルサポート」は、千葉県の訪問歯科治療支援を行う企業の名前だ。
いすみ鉄道が、駅の命名権をデンタルサポートに譲渡した。
この駅の付近には、戦国時代にかつて建てられた大多喜城がある。
町並みには、城下町として栄えた名残がある。
また、この駅からタクシーを利用して、いすみぽっぽの丘へ行ける。
いすみぽっぽの丘は、引退した鉄道車両が展示されている、屋外型の鉄道博物館だ。
鉄道好きなら一度は訪れたい施設だ。
大多喜から再び汽車に乗り、上総中野へ向かう。
駅間距離がやや短めの印象を受ける。
景色はずっと変わらず、水田や野原、木々や川の繰り返しだ。
のんびりした雰囲気に浸れる。
上総中野に来ると、車止めが見える。
小湊鉄道には乗り入れていないのが分かる。
駅舎は、木造で人が10人入れるか入れないかくらいの小ささだ。
木彫りの「上総中野」が、時代を感じさせる。
すぐに、小湊鉄道の五井行きに乗り継いだ。
今回は、房総横断乗車券(2千円)を利用した。
大原から上総中野経由で、小湊鉄道の五井までを一枚で乗り通せる。
今回の本来の額は2,400円だったが、この乗車券で400円安く乗れた。
いすみ鉄道は、元気な色合いの気動車が、緑豊かな地域をのんびり走る路線だ。
2024年5月乗車