2022年。爽やかな秋風が吹く頃、新幹線で名古屋にやって来た。
東海道線の下りに乗る。
大垣、米原と乗り継ぎ、次に乗るのは新快速・姫路行きだ。
なお、米原から先は東海道線の表記がなく、琵琶湖線、JR京都線、JR神戸線と、愛称が使われている。
車両は、オレンジ帯一色の車両(313系)だったのが一変する。窓周辺はグレーベージュに塗装し、その下部に白・青・濃茶・薄茶の帯が付いたデザイン(225系)となる。車内は転換クロスシートなので、疲れにくい。
米原を出ると、しばらくは田園地帯が続く。黄金色の絨毯が、風に揺れる。「近江米」とかかれたサイロもあり、ブランド米であるのが分かる。
大津まで来ると、右手に大海原のような琵琶湖が見える。対岸に建つリゾートホテルが遙か彼方に見え、陸続きなのが信じられない。
山が多くなり、トンネルをいくつか抜けると京都府に入る。京都駅に近付くにつれ、古い鰻の寝床状の家が増える。
そして、ホーム数が多く天井の高い京都駅に、滑り込む。
東京では見かけない国鉄型の車両が、他のホームに停まっている。
京都を出ると、一気に停車駅が少なくなる。京都〜大阪間は、高槻、新大阪にのみ停まる。
速度が一気に上がり、モーターが「グワングワン……」と轟音を鳴り響かせる。名古屋地区で乗った新快速も速かったが、レベルが違う。
巨大なウイスキー工場が目の前にある山崎を過ぎると、大阪府に入る。工場地帯を猛スピードで駆け抜け、高槻に到着する。
やがて宅地が増え、大阪のビル群が見えてきた。
新大阪を発車し、淀川を渡れば、大阪だ。
翌日、大阪から新快速・姫路行きに乗る。
発車して一気に時速130キロまで上がり、すぐ兵庫県に入る。車内はモーターの音が充満し、小刻みに振動を繰り返す。
少年が親に、「新快速速いなぁ」と関西訛りでつぶやく。地元民もそう思うのか、と感心した。
平凡な宅地が左右に広がる尼崎、大きな一軒家が周辺に集まる芦屋を抜ければ、神戸市の中心・三ノ宮だ。
高い山々を背景にビルがそびえ立つのは、神戸ならではの光景だ。場所によっては、建物が階段状に並び、道が勾配のある坂になっている。
反対側の窓を見ると、港がすぐそこまで迫っている。
三ノ宮から数分で、いよいよ東海道線の終点・神戸に到着だ。
下車して、ホームの向かいにある壁を見る。
大幹線の末端に来たことを告げる、ゼロキロポストを見つけた。
「東京起点 589K340M」
生まれ育った町の駅も、通勤通学で利用した駅も、皆ここに繋がっている。全区間乗った喜びで、涙が出そうになった。
神戸駅の構内は、装飾的な柱が並び、クラシカルな印象を受ける。起点の東京駅丸の内口に似ている。
そんな重要な駅なのに、神戸止まりの列車はほとんどない。多くの新快速が、神戸よりずっと西の姫路行きだ。
せっかくなので、姫路行きに乗った。
ここからは山陽本線と名前が変わる。
都会的だった神戸を抜けると、少しずつ建物の数が減っていく。
須磨まで来ると、瀬戸内海が目と鼻の先だ。タンカーが遠くに見え、いかにも港町らしい。
そうかと思えば、海水浴場のある庶民的な雰囲気の町もある。
本土と淡路島を結ぶ、明石海峡大橋をくぐる。
日本標準時子午線の上に立つ明石天文科学館も見える。
わずかな停車駅の後、終点・姫路に到着だ。
駅のメイン通りの突き当たりに、大きな現存天守・姫路城が見える。
空腹だったので、立ち食いそばでお腹を満たした。中華麺と繊細なダシの、優しい一杯だった。
姫路の駅前を見てから新快速に乗り、大阪へと戻った。
名古屋〜大阪の本来の運賃は、3,410円だ。
また、大阪〜姫路の本来の運賃は、1,520円かかる。
今回は、秋の乗り放題パス(7,850円の、3日連続で使えるJRのフリーパス)を活用した。
姫路から大阪に戻り(1,520円)、更に翌日は大阪〜名古屋を在来線で移動し(3410円)、名古屋から新幹線で東京へ戻った。
合計すると、9,860円かかる。
秋の乗り放題パスのおかげで、2,010円お得に乗ることができた。
2022年10月 乗車