愛知には、変わり種の鉄道がいくつかある。
そのひとつが、「リニモ」だ。
名古屋から、JR中央線で高蔵寺へ向かう。
高蔵寺から、愛知環状鉄道に乗り換えて、八草で降りる。約1時間かかる。
リニモは、2005年に開業した路線だ。
全部で9駅あり、所要時間は約20分。
名古屋市営地下鉄と愛知環状鉄道のエリアを結ぶために、開通した。
『愛・地球博』のアクセス路線としても使われた。
特徴は何と言っても、リニアモーターを駆使し、浮いて走ることだ。
レールや地面に接しないで走る鉄道は、日本でここにしかない。
駅のホームは、ガラスのホームドアに囲まれている。
「キイイ~ン」と高いモーター音を響かせて、車両が入ってきた。
車両は、1種類。
全体の形は、わずかに膨らみを持たせた四角形だ。
正面は、ガラス貼りだ。
側面は、白を基調に「Linimo」の文字が書かれている。
無駄を削ぎ落としたデザインだ。
全面が全てガラスで無人運転なので、前面の見晴らしがとてもいい。
ドアが閉まって発車すると、高いモーター音とともに加速する。
聞こえるのは、モーター音と、空調の音だけだ。
レールの継ぎ目の音などはなく、静かだ。
乗り心地も、浮いているだけあって、軽い。
八草から2駅で、愛・地球博記念公園に着く。
緑豊かな森に、ドーム型の建物や小さな建物が点在する。
大きな観覧車が、目の前を通り過ぎる。
万博開催時に訪れたことはないが、会場の大きさを想像できた。
沿線は、博物館が多い。
陶磁資料館南は、その名の通り陶磁資料館が駅の真横にある。
芸大通は、トヨタ博物館の最寄り駅だ。
どちらも大きな建物の博物館で、見応えがありそうな印象を受ける。
長久手古戦場の駅前は、イオンモールがそびえ立つ。
その隣駅・杁ヶ池公園の駅前にも、大きなアピタがある。
買い物に困らないどころか、どちらに行けばいいか迷いそうだ。
杁ヶ池公園とはなみずき通の間には、急カーブが2つもある。
特に、はなみずき通寄りのカーブは急すぎて、先が見えない。
まっすぐ伸びた下の道路がよく見える。
道路に滑り落ちてしまいそうだ。
むろんそんなことはなく、滑らかにカーブして進んでいく。
はなみずき通を発車すると、すぐに地下へ潜る。
暗い中でも勾配やカーブがあるが、スピードを落とさずに進んでいく。
ライトに照らされたレールが、自ら光を放っているように見え、何となくSFチックだ。
終点の、藤が丘に到着する。
改札を出ると、それなりに発展した町があると知った。
再びホームに戻り、次の列車が来るのを待つ。
「キイイ~ン」
ここは地下駅なのだろうか。
通常は音が集約されてうるさくなるが、リニモはモーター音しかしない。
こんな所からも、近未来を感じる。
リニモにしかない特徴は、浮いて走ることだけではない。
全ての駅に、マークが付いているのだ。
『愛・地球博』を訪れたい外国人が、駅を識別できるようにするために、デザインされた。
例えば八草は、グレーのひし形を、紺色の三角形4つが囲むマーク。
愛・地球博記念公園は、赤いひし形の中に、グレーのひし形が入っているマーク。
カラフルで形も様々なので、見ていて飽きない。
リニモは、車両も沿線も近未来溢れる、軽やかな乗り心地の路線だ。
2022年7月乗車